去年と一昨年にやったやつ。3年目です。
・『マンガ大賞2015』ノミネート全14作品感想 - 必需品ブログ
・『マンガ大賞2016』ノミネート全11作品感想 - 必需品ブログ
以下あいうえお順。
◆『アオアシ』/小林有吾・上野直彦
高校サッカーではなく、Jリーグのユースチームを舞台に描かれる、少年の成長と変化。
今まさに選ばれるべき漫画。というのも、6巻の終盤でこれまでの物語が全てフリだったのかという、大きな決断が主人公に迫られる。それはこの漫画の本当の始まりであり、Jリーグの育成年代が舞台という特徴に加えての、サッカー漫画に於ける新しい挑戦の表明といってもいい。
かつてズバ抜けた選手だった現ユースチーム監督が主人公の少年を見出すところから話は始まる。この辺は『GIANT KILLING』と近い感じもあるが、序盤のこの作品にジャイキリほどの洗練さはなくいくらか青臭い。それはユースチームが舞台なのもあるし、直情的で自信家な主人公による、少年漫画成分によるところが大きいんじゃないだろうか。
主人公のサッカー選手としての才は、何故かセカンドボールを拾い得点に結びつけられるところにあるが、それは広すぎる視野によるもの。しかしその才が、主人公を悩ませることになる。
仲間となる他のキャラクタも特徴的で魅力があるし、悪役(に見える)キャラの配置もよい。ヒロインも3巻あたりで可愛さがプチ覚醒するなど、毎巻楽しみどころがある。
サッカー漫画に限らず、スポーツが題材の漫画に於いて近年屈指なのは間違いないんじゃないだろうか。
◆『からかい上手の高木さん』/山本崇一朗
からかい上手な女子中学生・高木さんと、彼女にひたすらからかわれる男子の話。
教室で隣り合った席の男女によるやりとりが主というかほぼ全てなので、シチュエーションとしては『となりの関くん』に近い。ただ本作で振り回されるのは男子の方であり、コメディではなくラブコメ漫画。
高木さんとからかわれる男子の関係性は第1話の時点で固まっており、巻が進んでもその間柄に変化はない。1話完結で安心して読める反面、人間関係における広がりはほぼないので、2人のやりとりにニヤニヤ出来るか出来ないかで面白いか退屈かが決まると思う。
『全国書店員が選んだおすすめコミック2017』の1位作品でもある。10代・20代のラブコメ好き男子に支持される作品かなという印象だったが、高木さんにからかわれたい人たちはもう少し幅広いのかもしれない。
◆『金の国水の国』/岩本ナオ
おとぎ嫁婿ものがたり(帯より)。
対立する隣り合った国。一方の砂漠の国には金が、もう一方の貧しい国には水がある。両国は友好のため、国で一番美しい娘と一番賢い青年を送り縁組することに。しかし相手国からやって来たのは、それぞれ犬と猫で…。
読んでいる際の肌触りとしては、優しく穏やか。繊細さというより、作中のヒロインのように柔らかくて丸みがある印象。ヒーローも良い。魅力。
景観が見せゴマになることが多く、構図も含めて気持ちよく丁寧。見せゴマが人物のアップになりやすい人はこの人の作画参考にするといいかも。
エログロ的な刺激とは真逆の作風なので、そういうのを求めてる人には向かない。少女漫画という括りは少し違うかもしれないし、恋愛要素以外の楽しみどころもあるが、やはり少女漫画の作風に免疫がある人が読んだ方が楽しめる気はする。
『このマンガがすごい! オンナ編』の2017年1位作品でもあるし、ノミネートの今更感は否めないが、1巻完結で綺麗にまとまっているので先に書いたようなところで引っかからない人にはおすすめしたい。
◆『空挺ドラゴンズ』/桑原太矩
飛行船のような航空機に搭乗してドラゴンを狩り、食したり生活の糧にする漫画。
飛行船や背景の描き込み、ペンタッチを眺めていくだけでも楽しめる。
よく言われてることだろうけど、捕まえて食べるというこの漫画の主題が標的がドラゴンなのもあって、『ダンジョン飯』と被る。コミックでは柱ページに「龍料理レシピ」があったりして、もうちょっとズラせなかったのかなという気はしないでもない。そのページで、船の構造や竜を仕留める武器の設定を教えてくれた方が良かった。
空が舞台なのもあって『天空の城ラピュタ』を連想する雰囲気もある。変化球な題材じゃなくて、もっと王道のファンタジーでも十分面白いものを描けそうな作家なので、いつか挑戦してほしい。本人にそういう構想がないのなら有名作品を原案にするとか原作をつけてもいいと思う。2巻以降グルメ漫画から脱皮しちゃう展開もあるのかもしれない。
◆『ゴールデンゴールド』/堀尾省太
人間のふりして紛れ込んだ何かはヒロインの住む民宿に住み着き、結果広がる不穏。
1巻冒頭、侍が海辺で変な顔の人々を斬殺するシーンから物語は始まる。その後の展開は現代に。小さな島に住む少女は奇妙な人形を拾い、その人形が急激な変化となる。
第1話を読んだだけで分かる台詞力。「拝む」シーンのコマ割りだけで感じるズバ抜けたセンス。『GANTZ』初期のようなワケ分からなさと安心できない感じ。これを描こうとした時点で、常人は勿論ほかの漫画家とも一線を画している気がする。
まあただ、サブカル的というかカルト的というか、大ヒットはしようがないタイプの漫画。これをアニメ化しても視聴率もお皿も売れないだろうけど、いつか深夜ドラマで観たいという感じはある。
◆『ダンジョン飯』/九井 諒子
モンスターを仕留め調理し食しつつダンジョン探索する変態パーティーによるグルメ漫画。
なろう作品など、いま流行りの色物RPG作品の火付け役なのかなという漫画。いや『まおゆう魔王勇者』かもしれないし『勇者ヨシヒコ』シリーズがそうなのかもしれないが。同時に次々出てくるグルメ漫画との合わせ技でもあるけど、色物RPG作品としても色物グルメ漫画としても、やっぱ良く出来てて面白い。似たような作品と比べても、独自解釈の深度が違う感じはある。
今度また『魔法陣グルグル』がアニメ化するみたいだし、少しまえ料理漫画がそうだったように、RPGのお約束を下地にした作品も近年のトレンドなのだろう。
ともあれ、この作品と『東京タラレバ娘』は、「今更ノミネートしてどうすんの?」感がハンパない。だって『ダンジョン飯』って、前回じゃなくて前々回の『このマンガがすごい!オトコ編』1位作品なので。
今『聖☆おにいさん』がどうなってるのか分からないけど、この漫画も出版直後いきなり話題になったのはそのアイデアによるところが大きかった。ただ、この漫画というかこの作者は巻が進んでも薄まったり雑になったりすることがなさそうなので、1巻を面白いと感じた人の多くはその後も追いかけてるんじゃないかなという気はする。まあまだ冊数が少ないというのもあるが。
◆『東京タラレバ娘』/東村アキコ
アラサー女性3人の、こじらせ親父視点コメディー。
去年ノミネートされた際もコメント書いたし、作品と多少関係無いこと書く。
昨年の10月、漫画家の森田まさのり先生が企画した漫画家大喜利バトルを見に行った。そのイベントにはうすた先生やつの丸先生など錚錚たる顔ぶれが集まっていたわけだが、そこに東村アキコ先生もいた。東村さんにさほどやる気はなく、途中から緊張により飲みすぎたつの丸がただのヤカラとなり、暫くすると東村さんもヤカラに成り下がっていたわけだが、それでもコメントは面白かった。そして感じたこととして、時代とのマッチングみたいなこと。いや、漫画作品も読んでいるので人物だけの評価にはなりにくいわけだが、それでもコメントが、あるいは存在が、今の時代とガップリ組み合っている感じがした。なんだったんだろあれ、能動的に空気に合わせに来てて、それがめちゃくちゃ上手いひとなだけかもしれないが。
今って、批評芸というか、笑える批評みたいなことがバラエティ番組の流行りとなっている。有吉にマツコ、直近だとカズレーザーもそこで活躍しそうだけど、漫画家でその適性が一番ありそうというか、実際『東京タラレバ娘』でやってることが、それなんだろうなという気はしている。批評的視点を、笑いのセンスで包んで大衆受けしてるのがこの漫画。最新7巻でも「YOU ARE 仏!! アンド I’m 仏教徒」とか笑いのセンス凄いもん、あーみん先生かよ。てか切り取っても全然面白くねえなこの台詞。
この漫画についての比較的ちゃんとした感想はコチラから読んで。もう2年以上前に書いた文章だけど。
◆『波よ聞いてくれ』/沙村広明
オカルト配信ラジオDJ漫画(確か作中台詞より)。
この漫画も去年ノミネート時に感想書いたのでそっち読んで下さいって感じではあるんですけど、印象としてはこの漫画と『銀魂』は近いなっていうのが一つあります。ほら、銀魂って主要キャラの殆どが空知先生な感じあるじゃないですか。いや大なり小なり物語は登場人物に作者が投影されてるってのはあるでしょうけど、そうじゃなくて作者の思考言語にスピードだったりが、まんまそのキャラクターっていうか、そういうこともあると思うんです。で銀魂の場合は主要キャラの殆どが空知先生だった結果、あの勢いの作風になってると思うんだけど、『波よ聞いてくれ』の場合はそれがミナレさん一人に集約されているのかなと。ミナレさんがきっと性別転化した沙村先生まんまで、ラジオDJという職業柄もあってミナレが怒涛で話しまくっている結果、この勢いのこの漫画が出来ているところが似てるなあと思ったわけなんですよ、なんか文体変わっちゃったけど。
テンション高く沙村広明の語り口を楽しむ漫画なので、まとめて読むと疲れる。
◆『ハイスコアガール』/押切蓮介
90年代のゲーセンを舞台に繰り広げられるボーイミーツガール。
面白いとは聞いていたが、例の著作権問題による連載中止・コミック回収で、長いこと読めていなかった。今回7巻の購読を機に遡って読んでみたのだが、とてもおっさんホイホイてか中年ホイホイで良かった。
ちょうど90年代に格ゲーにハマっていた俺としては、語りたくなる漫画ではある。俺の地元にも「鉄拳少女」っていう本当に実在したのか噂なのか分からない存在がいて、深々と帽子をかぶって投げキャラで大人達を薙ぎ倒していくとされていた。俺たちはサクラ大戦の主題歌を熱唱しながら通学用自転車で隣町や隣の隣の町のゲームセンターに遠征していたわけだが、あの頃は本当にゲーム楽しかったなあ。KOFはブルー・マリーをよく使ってました。
ラブコメとしても切なくて良い。ヒロインである無口キャラの大野さん、3冊くらい読んで気づいたけど、無口どころかまともな台詞は全く無いんだね、心の声すらない。何気にチャレンジングだし、辿ってきた道含めて応援したくなる作品ではある。
◆『響〜小説家になる方法〜』/柳本光晴
日本文学界が舞台。圧倒的才能を持った少女が主人公。
サブタイトル違う気がする。表紙は地味だし、絵も微妙。だけど控えめに言って、ここ2年くらいで読み出した中で、いちばん新刊を楽しみにしている漫画。
歴史的才能の持ち主は15歳の女の子・響。地味な容姿に反し、気が狂っている。そんな響が4人の部員と一緒に高校で部活動に励むわけだが、あれだな、SOS団だな。響は涼宮ハルヒ並にぶっとんでいるのだが、ハルヒのような不思議さん感というより白い粉を常用していそうというか、よりヤクザな人のオーラを纏っている。
他の部員も良い。こちらに未来人・異世界人・超能力者といったSFな設定は無いが、愛せるし、あるいは違う角度でまたヤバい奴だったりする。特に部長は良い。彼女はスクールカーストにおいて常に最上位だった存在で、文学でもサラブレットかつ相当な才能の持ち主。だがそれでも響との間には巨大な差がある。それを感じ取り、葛藤する部長。彼女と響との関係性と変化が、今後この漫画の最大の読みどころになっていくのかなという気もする。『ガラスの仮面』のマヤと亜弓のように。いや分かんないけど。
リーダビリティも凄い。あだち充とかハロルド作石読んでるみたいな読みやすさ。それでいて扱ってる題材が「純文学」であり「才能」という。
1巻の響が屋上から落ちるシーンが当時のあまりの残念画力のため唯一のツッコミどころだった。でも素晴らしく面白い。
◆『ファイアパンチ』/藤本タツキ
なにこの漫画。
第1話が強烈。65ページの中で、ドス黒い復讐者が生まれるまでを描き切る。作中を支配する「氷の魔女」の存在や、生まれながら奇跡を使える人間「祝福者」の説明なども1話の中で行われており、上手い。しかしそれでも、復讐者になる前の妹と兄との恋仲的設定や、その死後の妹と激似のキャラクタの登場など、なんか好きじゃないテンプレ感があって、うーんって感じだった。その後無双するかに見えた主人公はたいした活躍も出来ないし、1巻終盤ではあっさりと復讐の対象と再会する。その上その相手に謝罪されてしまう。さらには突然登場する映画マニア・トガシの存在と、「うーん」だったのが「うん? ううん?」になり、1巻読了時点で既によく分からない。わりと1巻で読むのをやめてしまう人も多い漫画なんじゃないだろうか。
しかし2巻からが本番。2巻からはメタ要素というか、トガシの存在により物語批評の視点が加わり、さらに意味が分からなくなる。再生祝福者(主人公の妹に激似)の生首を手にしたトガシを、炎に包まれた全裸の主人公が追いかける。それをカメラマンにさせられた女が映像に収めるシーンはキラキラしていて、俺は何を読んでいるんだと気が遠くなった。
おちょくられている感じがあるが、それが作者の狙いなのかまあ狙いなんだろうけどまんざらでもないし、シリアスにやっても面白いもの描ける実力の上でやってる行き当たりばったりにしか見えない計算なのだろうから凄いですわ。ワケわからないけど凄い。
◆『約束のネバーランド』/白井カイウ・出水ぽすか
孤児院かと思いきや食肉施設。幼子たちはそこからの脱獄を企てる。
以降の残酷な真実とのコントラストのため、1話は非常に明るく始まる。表向きの施設と、そこで暮らす楽しそうな子供達。毎日の勉強もあって、主要3キャラは特に優秀。子供達を世話するのは「ママ」と呼ばれる一人の管理者で、子供達は全幅の信頼を於いている。
しかし早くも、幼女・コニーが命を失う。コニーは希望を持って施設から巣立つが、その夜、「鬼」により命を奪われていた。それを目にする主要キャラ2人。自分たちが食料として育てられてきたという現実を知る。そしてその場にはママもいて…。
感情移入も愛着も持てない段階でコニーが命を失うため、ただ残酷という印象しか持てなかった。そういう機能として使った登場人物だろうし問題ないんだろうけど。それと、長い間母親代わりだったママが自分たちを食料にしようと育ててきたという事実を知った主要キャラ達の切り替えが早すぎる。2話ではもう敵としか認識しておらず、そこに葛藤はない。
主要3キャラも1巻の時点では特に個性は感じられないが、あまりそういう部分が大切な作品ではないのかもしれない。どうやって脱出するかという、戦略や心理戦の描かれ方で今後評価が決まっていくのだろう。
単純に好みじゃないので、1巻のみ読んだ評価です。2巻以降盛り上がるのかもしれないし、楽しめる人も多い漫画なのかもしれない。
※あとから2巻読んだ。やはり好みではないが面白さは上昇する。仲間の中にいるある存在や場所の判明など。しかしやっぱこれ、少年ジャンプでやってるから新鮮なだけなんじゃね? という気がしないでもない。
◆『私の少年』/高野ひと深
普通に働く30歳の独身女性が12歳の美しい小学生男子と出会い、親しくなっていく。
よくある話にも感じるが、エロや同人以外の商業誌だと意外と無いのかもしれない。これが男女逆ならよくあるような気がするが、どっちにしろこの関係性で行こうとしたらめちゃくちゃ気を使う年齢設定だよな、30と12って。
読み始め思い浮かべたのは、『げんしけん』の吉武・妹。ショタコンな彼女は「つるつる?」「半ズボン履いて!」などと、彼女なりの理想の実現に前のめりだった。まあ『げんしけん』はコメディだし、迫っていた対象が実年齢は10代後半だったので、涼しげな空気感のこの漫画とは全然違いますけど。
美しい少年はヒロインに対して常に敬語。つまり、愛嬌を振りまき女ごころを惑わすような人心掌握に長けたキャラではなく、どこか不憫で放っておけなくなる清楚系美少年なんです。……なるほど、言語化すると確信できるが、あるね需要。願望を具現化するのも漫画だもんね。
本人は「ギャグが書けない」としているが、あとがきもなかなか面白い。オネショタものっていうのかこのジャンル。
作者の「高野ひと深」先生の「深」だけ漢字を残しておくこだわりだったりにまだ謎はあるが、この漫画に大きな需要があるのは理解できた。
以下、総評。
去年も同賞にノミネートされた漫画が3作ある。『ダンジョン飯』『東京タラレバ娘』『波よ聞いてくれ』。『波よ聞いてくれ』は置いておくとして、『ダンジョン飯』は個別のとこでも書いたが前々回の『このマンガがすごい!』1位作品なわけだし、今更ノミネートしてもなあ、と思った。『東京タラレバ娘』も絶賛ドラマ放映中だし、この2作が最終候補の中に入ってしまうんだとしたら、これはもう「知名度の無い新作を発掘」みたいな賞ではないのかもしれない。
マンガ大賞のノミネート基準って、「選考年の前年度に出版された単行本の中から、最大巻数が8巻までに限定された漫画(過去にマンガ大賞受賞作は除外)」となっている。これは「それ以上(8巻以上)の長さのものは、面白さは世間に知れ渡っているだろう」という理由からのようなのだけど、今ってこの手の漫画賞が乱立した関係で、8巻よりかなり早い段階で面白さが(少なくとも漫画好きの間では)知れ渡っていることが多い。例えば『このマンガがすごい!』は年1のムック以外にもWebで毎月ランキングをやっているし、『次にくるマンガ大賞』は、Webで連載してる作品に絞った上に5巻以内に限っている。そのあたりの漫画賞と比べると、時期的なものもあるがどうしてもこの賞は新規開拓みたいな点では弱くなってしまう。
それとこれはこの賞に限らないけど、如何しても刊行速度が遅い漫画の方がノミネート回数多くなるなあと感じる。『僕だけがいない街』が何度もノミネートされていた時も思ったけど。『ダンジョン飯』はもしかしたら今の基準ってか選考員の感覚のままだと、来年も再来年もノミネートされるんじゃないだろうか。もちろん面白い作品ではあるが。
ノミネートされた中での私的順位はこんな感じ。トップ3だけ。
- 『響〜小説家になる方法〜』/柳本光晴
- 『アオアシ』/小林有吾・上野直彦
- 『ファイアパンチ』/藤本タツキ
『響』か『アオアシ』だと思う。『ファイアパンチ』は2巻と3巻が斜め上すぎて抜群に面白いんだけど、1巻が微妙なので上位2つとは今のとこ少し空く。
全体的には2作品ほど楽しめなかったタイトルがあって、それは各作品のレビュー読んで貰えばわかる気がする。でもどちらもネットでの評価は高いようなので、ほんとシンプルに好みの差異なのでしょう。
好みっていう話でいうと、ノミネートされなかった中では『春の呪い』だったり『パンティストッキングのような空の下』が去年新刊として出た中では好きだった。まあどっちも『このマンガがすごい!2017』で上位に入った漫画なので、タイトル挙げても目新しさはないけど。
※『パンティストッキングのような空の下』は単行本として出たの2015年末だった、すいません。
『春の呪い』は邦画っぽいというか冷静に考えると地味な話なのだけど、1巻ラストの引きが強烈で印象的だった。2巻完結というのもあって、去年の『百万畳ラビリンス』や、浅野いにおの『ソラニン』のような感触があるかもしれない。いやどうだろ。3作に共通してるのは、たぶん作者が描き始める前に終幕まで構想を練っていて、その通りに終わらすことが出来たんだろうなという点。
『パンティストッキングのような空の下』は、今回ノミネートされた中だと『ゴールデンゴールド』にきっと近い。作者の天才肌な感じが。『ユートピアズ』の頃からのファンでこのブログでも以前に記事にしたことがあったので、プチブレークしたのはとても嬉しい。『ワールドイズマイン』の完全版思わす帯だったりを仕掛けた、担当編集もえらい気がする。この作品は短編集なのだけど、その中でも珠玉である「唯一者たち」は、同作者の『一匹と九十九匹と』のアンサー的短編なので、気に入った人は過去作にも手を出してみるべきだろう。
あとは『スピリットサークル』。輪廻天性がテーマ。前前前世どころか、前前前前前前世を含めた過去生を7回追体験し、その中で謎を明らかにして巨大な因縁に主人公たちが立ち向かう。去年最終の6巻が出て完結したし、今回は選ばれたらいいなと思ってたが選ばれなかった。『このマンガがすごい!』でも脚光は浴びなかったけど、近年完結した中でも名作だと思う。
最近の漫画の傾向としては「色物RPGが流行りだなあ」だったり、「引き続きグルメ漫画多いなあ」だったり、「批評的な漫画が増えるかもなあ」みたいなことを思っています。以上です。