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むかし、夕日の校庭で

 小学生のころ、すごい『幽遊白書』が好きだったんですよ。『ドラゴンボール』より、『るろうに剣心』より、だんぜん『幽遊白書』が好きだった。

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 何度も何度も、漫画やアニメを見返しました。何度読み返しても面白い漫画。でも、僕が住んでいた地域では、アニメ版だとなぜか魔界に行ってからの話が放送されなかったんです。たしか、仙水というキャラクターと戦った後、話をだいぶとばして最終話が放送されたんだと思った。

 『幽遊白書』の最終回って、主要な登場キャラクターが海に遊びに行く話なんですよ。主人公の幽助、その仲間の桑原に飛影、それに蔵馬なんかが、ヒロインの螢子やボタン、静流ねえさんと一緒に海に行く。これがね、妙に恥ずかしい内容なんですよ。主人公とヒロインのキスシーンとかあった気がする。「あっちが神なら、こっちは女神だ」とか、頭ん中におじぎ草でも生えちゃったんじゃないかという、信じられないセリフが飛び出したの覚えてる。小学生の僕にしたら、やたらとアダルトな回だった。静流ねえさんに至っては「こりゃ一泊決定だな」とか言ってたから。静流ねえさんは親と一緒にテレビを見てる小学生の気持ちが分からない女なんですよ。

 しかしね、なぜか僕、この最終回をビデオに録って、小学校に持って行ったことがあったんです。僕の小学校って、給食の時間に生徒が持ち寄ったビデオを流してもいいことになってたんですよね。だから持って行って教室で流した。いやあ、和やかなはずの教室のお昼時が、その日ばかりは張り詰めた。

「あっちが神なら、こっちは女神だ」

 BGMで『微笑みの爆弾』が流れる中、そんなセリフですよ。いや、正確にはアニメ版にはそのセリフは出てこなかったかもしれないのだけど、時の経過により脚色された僕の記憶の中では、幽助と螢子のキスシーンもソフトな感じじゃなくなってるからね。もっとどろっとしたものに置き換えられてる。

 そりゃ教室も不穏な空気になりますよ。おいしいはずの給食も味がわからない。しかもこの状況を作ってる張本人が僕ですからね。意気揚揚と最終回のビデオを持ってきたのは僕だ。

 

 生きてる内に何回 アリガトウと言って 笑えるだろう 

 生きてる内に何回 サヨナラと泣いて 別れるだろう 

 決まってるだろ 比べて多い数は 

 黒く塗り潰して まだまだコドモさ 


 何故だか    理由は無いのに 急に 涙

 震えてる 指先がまた 笑えてくるだろ

 ごっさごっさ    親切な人達が 出し抜けに 覗かせた

 蔑みの せいだったり しちゃうんだろうね 

 ゴ・チ・ソ・ウ・サ・マ・デ・ゴ・ザ・イ・ます!
 
 (上記、諸事情により『微笑み爆弾』に替えて、当ブログ管理人作詞作曲の『笑顔の核弾頭』)
 
 とりあえず僕も「ゴ・チ・ソ・ウ・サ・マ・デ・ゴ・ザ・イ・ます!」とか言いながらビデオを止めることしかできませんでした。その後はニワトリ小屋へ直行。あの日のことは未だに鮮明に覚えてる。まさに小学生。まさに黒歴史。


 ですがね、そんなエピソードを思い出していたら、もう一つ『幽遊白書』絡みのお話を思い出したんですよ。それが「幽遊サッカー」。

 僕の実家って、シシ神様とかが出てきてもなんの違和感もないような秘境なんですけど、それ故にバス通学が認められていたんです。僕の小学校全体でも、このバス通学が認められているのは10人程度。同学年だと4人がこの町営のバスによる通学を認められていたんです。

 1日に4回しか来ないこのバス。3時半頃に来るのですが、これに乗り遅れると次に来るのは夕方の6時近くになる。ときどきこの3時のバスに乗り遅れた僕らは、校庭で次のバスが来るまで、その幽遊サッカーで時間を潰していたんです。

 メンバーは僕にあきひろ君、さいとう君にたかし君。

 ちなみに、たかし君は同級生ではありません。同級生のもう一人はあきこちゃんといって女の子。小学生の女子と男子の間には3歳くらいの精神年齢の開きがありますから、あきこちゃんは幽遊サッカーになど加わろうとはしません。たぶん図書室かどっかで本読んでた。

 たかし君というのは、ひとつ上の学年の生徒でした。名前は分からないけど何かしらの新興宗教を信仰していて、それを理由にマラソン大会などには参加しませんでした。そのためか、多分たかし君は同学年だとちょっとハブにされてたんだと思う。バス待ちの僕らの所に来ては、リーダーみたいなことしてた。

 「よし、今日は幽遊サッカーやろうぜ」

 たかし君が言います。僕たちは駆け寄りました。

 そろそろ「幽遊サッカー」の説明が必要かと思うんですが、これは結局のところPKです。1人キーパーを設定して、あとの3人はボールを蹴ってゴールネットを揺らすという。でも普通のPKとは違うところもあって、それは4人がそれぞれ『幽遊白書』のキャラクターになりきるというところ。なりきって、それぞれの必殺技で勝負してた。

 「じゃあ俺は桑原ね」

 なぜかたかし君は桑原をやりたがります。

 「じゃあ僕は飛影」

 あきひろ君が飛影をとりました。あきひろ君は背が低いので、いつも飛影で固定です。

 「なら幽助」

 僕が主人公をとります。漫画のキャラクタにおいては往々にして脇役の方が人気があるのですが、まだ小学生なので主人公をやりたがりでした。

 そうすると、さいとう君が残ってしまいます。
 「じゃあ僕は、僕は・・」
 さいとう君は躊躇しますが、残っている主要キャラはひとり。さいとう君は蔵馬です。鼻をたらした、坊主頭の蔵馬が誕生しました。

 「来やがれお前らああ」

 桑原になったたかし君が吠えます。たかし君はキーパーをやりたがりです。「霊けーん」などと言いながら、僕らの蹴ったシュートを手刀ではじき落とします。やっぱり小学生においての1学年差はでかい。しかし僕らだって黙っちゃいない。

 「霊がーん」

 僕のレイガンが火をふきます。(足から)

 「ぶおーん」

 しかしよく分からない効果音を口にしつつ、まさし君がボールをはじく。

 「こくりゅうはー」

 でました、あきひろ君の黒竜波です(足から)。しかしそれすらもはじくまさし君、しかし、こっちにはまださいとう君がいます。

 「ローズウィーップ」(しなるようにうつ)

 「甘いわー」

 もはやキャラが分からないながらも、僕ら3人の必殺技をことごとくふせぐたかし君。やっぱり勝てないのか、つよいぜ、つよすぎるぜ桑原。しかしそんな時、さいとう君が口をひらきました。

 「やっぱり、この身体のままじゃだめみたいだ・・」

 さいとう君が本気になりました。

 「でた、ついにさいとうがあの姿にもどるぞ」

 「妖狐、妖狐さいとうだ」

 僕らのテンションもマックスに達しました。あきひろ君は黒竜波を自分に向かってうち、僕はサッカーボールを複数並べてショットガンを再現しようとします。

 「うわあああああああああああ」

 さいとう君のボルテージもマックス。

 「ローズ、うぃいいいいいいっぷ」

 妖狐となったさいとう君のローズウィップがまたしても炸裂。妖狐になってもその技使ってんのかよとか思っていると、明らかに僕らとは違う声色が響きました。

 「やめてええええええええええええ」

 僕らは振り向きました。そこにいたのはあきこちゃん。図書室で本を読んでいるはずのあきこちゃんがいつのまにかやってきていて、大声を張り上げていました。

 「くらまは、だめえええええええええ」

 どうやら蔵馬のファンだったらしいあきこちゃん。妖狐さいとうに向かって、彼女は絶叫していました。

 「だめなんだからねえ!」

 そう言うと、あきこちゃんはバス停のほうに歩いて行きました。


 その後、幽助と飛影は苦笑い、桑原は立ちつくし、蔵馬は少し泣きました。「好きで蔵馬やってたわけじゃないのに・・・」そう言って、泣きました。夕日で校庭は黄色く染まっていました。じゃあ最後に、少しだけ聞いて下さい。『笑顔の核弾頭』。

 生きてる内に何回 アリガトウと言って 笑えるだろう 

 生きてる内に何回 サヨナラと泣いて 別れるだろう 

 決まってるだろ 比べて多い数は 

 黒く塗り潰して まだまだコドモさ 


 何故だか    理由は無いのに 急に 涙

 震えてる 指先がまた 笑えてくるだろ 

 ごっさごっさ    親切な人達が 出し抜けに 覗かせた

 蔑みの せいだったり しちゃうんだろうね 

 ゴ・チ・ソ・ウ・サ・マ・デ・ゴ・ザ・イ・ます!


 ごっさごっさ    楽しいひと時だって 急に    涙

 震えてる 指先がまた 笑えてくるだろ

 ごっさごっさ    親切な人達が 出し抜けに 覗かせた
 
 蔑みの せいだったり しちゃうんだろうね 

 ごっさごっさ    嬉しい時だって 忘却なんて出来ないよ 

 永劫に 指先のそれ なおらないよ

 ごっさごった    精神不安定な人に 処方する

 頬袋の 裏側に 仕込んである

 エ・ガ・オ・ノ・カ・ク・ダ・ン・トウ! 

 (作詞・作曲/必需品)
 

 

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