ククリと魔王討伐の旅がしたかった/衛藤ヒロユキ『魔法陣グルグル』
この時間帯になるとよく思うことがある。俺は、ククリと魔王討伐の旅がしたかった。
ククリと旅がしたかった。「勇者さま〜」って言われたかった。魔法陣を書く間、無防備なククリを全力で守りたかった。
しかしどうだこの人生。ククリ現れねぇじゃねえか。31年だぞ、31年プレイしたんだぞこのゲーム。
序盤だろ、原作では第一話で現れるだろククリ。
現われねえじゃねえか。全然現れねえじゃねえか。考えてもみろよ、ククリの居ない魔法陣グルグルってどうよ。
グルグルじゃねえだろ。ふざけんな。そりゃニケの頭髪も薄くなるわ。ふざけんな。
じゃあジュジュよこせよ、いいよジュジュで。俺はジュジュも好きだよ。ジュジュがお祈りする間、全力でサポートするよ。
でもジュジュ、なんか怖いじゃん。ミスしたら怒りそうじゃん。あとやっぱ俺、「勇者さま〜」って言われたい。
じゃあククリだよ、やっぱククリよこせよ。もうやだよ俺…ククリのいないこんなクソゲープレイしたくないよ…。
もしかして俺って勇者じゃないのかな。
31年間、ずっと勇者だと思って生きてきたけど、勇者じゃないのかもしれない。
でも俺、父親に勇者の英才教育されたよ。ホットケーキにプロテイン混ぜられて焼かれてたもん。
俺の周り、おっさんしかいない。キタキタ親父みたいのしか居ない。親父好きだけど、あんたと2人で旅するのきつい。魔王倒すモチベーション出ない。
魔王は俺以外の誰かが倒してくれるんじゃないかな。
もういいや。しょうもないわこんなゲーム。目的変えよ、行こうぜギップル、ククリを探す旅だ。
なんなら、俺がククリになるわ。最悪、俺がククリになる。