コミュニケーション能力か、一芸に秀でるか

今週のお題「人生に影響を与えた1冊」
子供の頃、パチンコで勝つと景品を持ってやってくる親父の友達のおじさんがいた。このおじさんは俺が小学5年生あたりまでちょくちょく家に来てて、お菓子やよく分からないおもちゃを持ってやって来てた。

おじさんの目当てはうちの妹だった。目当てと書くとロリータコンプレックスのやばい奴のように映るかもしれないけどそういうことではなくて、単純に妹を可愛がりにくる感じだった。幼い日の俺もその場にいたのだけど、基本的に妹とばかり喋っていた。俺はそれを見て「そりゃそうだよな」と思っていた。

妹の人懐っこさが恐らく標準的なものよりもかなり高水準にあるのは子供心に分かっていて、こりゃ勝てないなと思った。愛想を振りまくと疲れてしまう俺に対して、妹はずっとにこやかに喋っている感じ。女の方が雑談に向いた脳の構造をしているとは聞くけど、よく喋る女性でも全く楽しくないことを延々話し続ける人はいるし、そういうのはだるいなと思う。勿論男にだってそういう人はいるけど、妹は相手をなんとなく楽しくさせる雰囲気とかリズムも兼ね備えていたので、これは勝てないと思った。

今の俺の座右の銘のひとつに「勝てない場所では戦わない」というのがある。だからと言って人生に置いて何か勝てたものがあるかと考えたら思い当たるものがなくて涙が頬を伝うのだけど、少年だった俺もそのようなことを考えてコミュニケーション能力で戦うのはやめようと思った。

そうなると何か一芸に秀でなくちゃいけないような気がした。今考えると俺は家でこそ喋らなかったけど学校ではそこそこユニークな発言や動きをしていたし、決して致命的に社交性が無かった訳ではないと思う。確かに高校に上がると同時に「何かが俺の首を絞めつけてくる」という強迫観念に駆られて首回りを掻き毟るというやや不安定な日々を過ごすことにはなるのだけど、中学卒業までは程よく明るかった。

「コミュニケーション能力か一芸に秀でるか」なんてよく分からない二択を強いていた少年時代の自分にタイムリープして伝えたいのは「どうなろうが社交性はかなり重要だよ」ってことなのだけど、時間を逆行して伝えても結局高校に進学したら人前で動悸息切れが止まらなくなったり首回りを掻き毟ったりするのだと思う。だからどう足掻いても今の地点に繋がっているのは変わらないような気もする。

そんな妹を可愛がっていたおじさんがパチンコで貰った景品だかの中に『H2』の1巻があって、読んだらハマって完結まで追いかけた。それ以外にもあだち充作品は殆ど集めることになる。
おじさんは暫くして親父を包丁で刺そうとしたらしくて、そのあと家には来なくなった。

H2 (1) (少年サンデーコミックス)

H2 (1) (少年サンデーコミックス)