読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

赤いロードレーサーと白いダッフルコート2

はてな 思い出


マクドナルド・キッス - 意味をあたえる

 読んだ。郷愁を刺激されたので書く。

実家の栃木がすごく田舎だったので、中学は自転車通学だった。片道30分かけて通っていた。行きはほとんど下りなのだけど、学校の手前1kmだけは上り坂だった。帰りはその逆だ。

親戚から赤いロードレーサーをもらった。高校で自転車競技をやると言ったら、競輪選手を目指していたおじさんが乗らなくなったそれをくれたのだ。フレームはコルナゴだったし、コンポはデュラエースだった。錆びついていたけど結構な値段しただろう。中学2年の夏あたりから、その自転車に乗って中学へ通っていた。

当時サッカー部だったのだけど、中2の夏は1日も休まずに部活に通った。そこまでサッカーに打ち込んでいたわけではないのだけど、監督と約束したのだ。
「1日も休まないで部活に行ったら漫画を返してください!」
同級生に貸したら授業中に読みやがって先生に没収された漫画を返してもらうため、僕は休むことなく部活に通った。貸したのはあだち充の『ラフ』だった。いや『虹色とうがらし』だったかもしれない。

漫画を貸した奴は堀江といって女だった。クラスに1人いる不思議枠。選択授業のダンスと剣道で、女子の中で1人だけ剣道を選択し、男子に紛れて竹刀を振っていた。僕はダンスがしたかったのだけど剣道を選んだので、その時は敗北感を味わった。1日も休まなかったので漫画は返してもらった。

冬になっても自転車通学だった。当たり前か。何を思ったか白いダッフルコートを買ったのでそれを着て、赤い自転車に跨って学校に通っていた。肩からは蛍光タスキ、頭にはヘルメット。異彩を放っていた。

帰り道。学校からの下り坂を下っていると、女子グループに手を振られた。
「必需品くんじゃあねえ!」
幻聴だったのかもしれない。けれど僕は手を振り返そうと、後ろを振り返ってハンドルから片手を離した。すると自転車の前輪は縁石に乗り上げ、盛大にクラッシュした。

僕はコンクリートに突っ込む顔面をかばうため両の手を先に着いた。掌はズル剥け、飛び散った血は白いコートを赤く染めた。
女子グループが駆け寄ってきた。
「大丈夫?」
「ズル剥け!ズル剥けだよお!」
ズル剥けてない僕の心は傷んだ。
「軍手貸してあげるよ!」
そのうちの一人が軍手を貸してくれた。僕は軍手をはめて帰った。

帰宅し軍手を外そうとすると、軍手は皮膚が剥げた掌と一体化していた。それを外すのはこけた時の何倍か痛かった。

通っていた中学は少子化のため廃校になり、工場になった。工場は一昨年火災になって焼けた。