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安全ではありません

魔法少女になって半年が経った

俺が魔法少女になって半年が経った。早いもので、すでにこの世界にもだいぶ慣れてきている自分がいる。
あの日は本当に驚きだった。まさか俺が赤の魔法少女だったなんて。

ピンク「どうしたの? なんか今日も黄昏ちゃってる感じ?」

ピンクの魔法少女が喋りかけてきた。こいつは元は黄の魔法少女だったのだが、当時のピンクを陰険なやり方で引退させ、自らがピンクとなった。

ピンク「いよいよだね、魔王がいよいよ目覚める感じ」

何を言っているんだろうと思った。この世界にそんな設定は無いのに。

ブルー「大変だ! お前ら、何ちんたらやってるんだ!」

ブルーが言った。ブルーは元の世界では管理職だったらしく、何かと上から目線なところがあってうざい。「どうしたんだ?」、イラ立ちを抑えて聞いた。

ブルー「魔王だ、西の魔王が、ついに蘇ろうとしている!」

どうやら魔王は本当に存在したようだ。世界にはまだまだ知らないことがある。

ピンク「見て! 空が、空が!」

空を見上げた。その空は灰色で、今にも雨が降りそうな雰囲気だが、これは降らないタイプの空だなと思った。こういう空が好きだ。

そういえばあの日の空もこんな具合だった。それはまだ、元の世界にいた頃の話。その娘は、灰色の空を見上げながら言った。
「なんか、こういう日って、死にたくなるよね」
「は?」と思った。別に死にたくならないからだ。むしろ、こういう灰色がかってはいるが、雨は降らないという天候が好きだった。
俺は「いや、ならないけど」、そう答えた。すると彼女は「はは、キミには分からないか」みたいな言葉を返したあと、どこかアンニュイな表情を浮かべた。
「なんだこいつ、気持ちわる」と思った。

ピンク「う、嘘でしょ……」

ピンクの驚愕の声で、俺は我にかえった。目の前の灰色の空が割れ、何かにゅるにゅるとしたものが這い出てきている。

ブルー「西の魔王だ」

まじかよと思った。こんなにもにゅるにゅるしているだなんて。

にゅるにゅるは、ひとしきり空の割れ目から這い出続けたあと、「うにゅう、うにゅう」と鳴いて、しばらくして干からびて死んだ。

俺たちは勝った。