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安全ではありません

『シン・ゴジラ』を口実に『崖の上のポニョ』を語る

『シン・ゴジラ』、2回目観ました。ほら、僕いま無職じゃないですか。だから暇というか心に余裕があるというか暇なんだろうね、2回目観たよ。

1回目は4DXで観たのよ。プシューって風が来たり、水しぶきかけられたり、香ったりイス動いたりでテンション上がった。個人的に一番4DXすげーって思ったのは、長谷川博己と石原さとみがなんか特に何もないとこで話しててカメラがグーって引いてくシーン。いやなんでそんな無駄に遠くから撮ってたんだよ、そしてなんでそんなにも一時的に寄ったんだよって感じるシーンなのだけど、このひたすらカメラが遠のいてくのと同時に、イスがちょっとずつ傾くのですよ4DX。だから実際に引いてる以上に、地上から発射された衛星に備え付けられたカメラが宇宙に漂うまでみたいな、そんな雄大な心持ちに意味もなくなれた。あれ4DXを前提にした監督の狙いなり悪ふざけなんかね、2回目通常の上映で観たらやっぱ必要以上にカメラ引いてって「なんなん」って思った。

昨日たまに読むブログの記事読んだら、特定のシーンに対して「あそこで笑うのは不謹慎。笑えないし、笑ってはいけない」的な意見を述べていた。俺はへーって思った。見方はやっぱ人それぞれなんだなあと。火種仕込んでるのかもだが。
個人的にはこの映画の序盤は日本の政治機構を風刺的に描いたおかしみを楽しみながら鑑賞していた。声を出して笑うようなことはないけど、時折ニヤつきながら観ていた。登場人物が多すぎる映画なのでどんなポストのなんて名前の人が言ったか覚えてないのだけど、「これは思ったより想定外すぎるぞ」って真面目な顔でいい放つシーンはちょっと面白かった。その人は別なシーンでも「まったく想定外の大きさだ」みたいなこと言ってて想定外が口癖なのだろう。総理大臣の口にする台詞やキャラクタもいかにも日本人然としている。ハリウッド映画で大統領だったらジャンルがコメディでもない限り国のトップがこんな描かれ方はまずしないんじゃないだろうか。

1回目観たときはあんま人いなかったのだけど、2回目は沢山お客さん入ってて、幼児を連れた家族もいた。1回目は4DXで千円増しだからそれがあるか。んで、『シン・ゴジラ』って見た目がけっこうあれなんですよ、キモい。あと怖い。ほら、ゴジラシリーズってハリウッドゴジラは未視聴なのだけど、割と日本の守護者みたいな位置づけだったんでしょ? いや1954ゴジラは観たことがあるから初出ではそうじゃなかったの知ってるのだけど、それが途中から正義の見方って位置づけになった。やっぱ正義の味方となると少しシュッとしてくるというか、カッコよくなる。
あとこれはネタバレになっちゃうけど、シン・ゴジラってフリーザ様よろしく、何段階かの変身をする。最初はキモくて、なんか気づいたら馴染みのあるあのゴジラみたくなってる。いや松井秀喜にはならない。そんで、映画観てないとその最初のキモい段階ってピンとこないかもしれないけど、あれだなって思ったんですよ、『崖の上のポニョ』のポニョも一緒だなって思った。

俺、映画館で同じ映画を2回以上観ることってそうそう無いんだけど、『シン・ゴジラ』は面白くて2回見た。それに『崖の上のポニョ』も2回観たんですよ、8年くらい前に映画館で。そんな面白いとは感じなかっのだけど、1回目観終わったときに近くで観てた女児が母親に「どう、面白かった?」って聞かれて「なんか怖かった〜」って応えてたのが妙に気になって、それで2回観たんですよ。「ん、怖い?」と思って。で、2回観ると分かることがあるよね。ポニョって真ん中の段階がキモ怖い。

ポニョは、登場時は人の顔のついた魚という、デフォルメされた人面魚の風貌で登場するのよ、ちょっと可愛い。それがなんだかんだあって、幼い人間の女の子に見た目を変える。この主たる2つの姿は可愛いといって差し支えのないそれなのだけど、間にあるあの姿を皆さんは覚えているでしょうか。フリーザ様も思い返してみれば最初と最後のそのシュッとした出で立ちとは別に、間になんかよく分からないお姿があったじゃないですか。ビスケの本当の姿みたいのと、封神演義に於ける仙人骨の概念が極端に誇張されちゃったみたいなそんなお姿があったじゃないですか。それと同じことがポニョの身にも実は起こってた。

『崖の上のポニョ』ってポニョの真ん中の段階の見た目がキモい以外にも、よく見ると、何か恐怖に訴えてくるキモいシーンが他にもあるんですよ。例えば岩場で大量のフナムシがばーって散っていくシーンがあるんですけど、その気持ち悪さってもはや生理的拒否で、ゴキブリの巣を突き止めてしまった際のそれの再上映なんです。これがまっ黒くろすけだったらいいんです、あいつらってなんか煤で汚しそうだけど、見た目可愛いじゃん。だから許せる。けどあのフナムシが散ってくシーンはほんとただキモくて、ある種の恐怖なんですよ。

他にもあって、言うならポニョの兄弟たちが大量に群がるシーン。彼女兄妹がめっちゃ多くて、その兄妹たちがポニョが閉じ込められた空気の玉を協力して食い破るシーンがある。あのシーンもなんでしょ、密集したフナムシみたいなそういうキモさがあるのだけど、同時にあれだわ、エヴァでアスカが覚醒して量産型エヴァを駆逐駆逐〜ってぶっ倒すシーンあるじゃん、その後いろいろあって、量産型エヴァが2号機を寄ってたかって食べるんだけど、あのシーン的怖さがある。いや無いかもしれないけど、『崖の上のポニョ』ってそういう「なんか怖い」「なんかキモい」という映像表現の多い映画だった。

まあ、ポニョってそういうなんでしょ、向こうの世界へ行って成長して帰って来る的な物語の先にいっちゃってた話らしいんで、怖さを感じる描写やモチーフが頻発するのは当然だったわけですが。ポニョは2回目見て、女児が「怖かった〜」と言ってた意味が自分なりに理解できたんですよね。ちなみにゴジラ観てた男児は別に怖がってなくて、ゴジラが出てきた時だけスクリーンに見入ってそれ以外の時はわーわー言ってて騒がしかったです。さほど嫌じゃなかったけど。

あと、『シン・ゴジラ』には元KICK THE CAN CREWのKREVAが出てるらしいんですけど、2回目見てもどこで出てきたのか分かりませんでした。エンドロールには名前があるのに、どこに何役で出てきたか分からないKREVAの存在。恐ろしい。でも『崖の上のポニョ』には声優で長嶋一茂でてたからね。エンドロールで一茂の名前みつけた時の恐怖に比べれば、KREVAの存在は程よいミステリ要素だよ。

今週のお題「映画の夏」