必需品ブログ

日記でしかない

キャッチ・ザ・エイリアン

人 物
佐伯直実(11)小学5年生
菊間美和(10)仲良し
益子司(11)同級生
郡司健斗(10)同級生


◯戸隠公園
   ミニサッカーのゴールが設置された公園。ゴール前で、郡司健斗(10)と益子司(11)がPKをしている。健斗のシュートが、ゴールネットの右端に決まる。キーパー役の司は飛びつかない。
健斗「なんだよ司ー、止めようとしろよ」
司「今のは無理でしょ。ナイスシュート」
健斗「そりゃ俺のシュートはいつだってナイスだけどさあ」
   健斗と司のPKの様子を、菊間美和(10)は離れた場所のベンチの陰から見ている。その背後の草むらでは、佐伯直実(11)がスマホのカメラを何かに向けている。
美和「健斗君すごーい。かっこいー。ねえ直ちゃん、今の見た?」
   直実は真剣な表情でスマホの画面にタッチしている。
美和「直ちゃん?」
直実「オッシャー捕まえたー! エイリアンプリンス!」
美和「エイリアンプリンス?」
直実「結構レアなんだよ。あ、知らない? キャッチ・ザ・エイリアン」
美和「知らないよ。スマホのゲーム?」
直実「そう! いま流行ってるよ。見て」
   美和にスマホの画面を見せる直実。

スマホ画面。
   画面には虫かご。その中で、デフォルメされた3Dキャラのエイリアンプリンスが、ニュルニュルと動いている。エイリアンプリンスの目には涙。
美和の声「何これ」
直実の声「さっき捕まえたエイリアンプリンス。えへー、凄いでしょ」
美和の声「……可愛くない」
直実の声「はあ? 可愛いいし! いや、どうだろ、でも少なくともきも可愛いし!」
美和の声「直ちゃんのそういう感覚、わたし相容れないわー」
健斗の声「あ、キャッチ・ザ・エイリアンじゃん」

◯戸隠公園
   振り返る直実と美和。そこにはサッカーボールを手にした健斗。
美和「け、健斗君」
健斗「何このエイリアン(直実からスマホを奪い)げ、プリンスじゃん。すげー! プリンス捕まえた奴初めて見た!」
直実「(スマホを奪い返し)返してよ! もー、汚い手で私のスマホに触らないで貰えますか。タッチ画面の反応悪くなるんで!」
健斗「うわ、やな奴」
   直実はスマホを手に、また草むらの中に入っていく。
美和「健斗君もあのゲーム知ってるんだ」
健斗「知ってるよ、てかやってる。司もやってるし。 菊間はやってないの?」
美和「え、うん、私、みまもり携帯だから」
健斗「みまもり携帯?」
美和「(ポケットから携帯を取り出し)これ」
健斗「(みまもり携帯を奪い)うおー、すげー!パカパカじゃん! パカパカ式使ってるのかっけー!」
美和「え、かっこいい? そうかなあ。そうかなあ」
   司がリュックを2つ手に歩いてくる。
司「おい健斗、菊間さんに携帯返してやれよ、お前の汚い手で触ったらタッチ画面の反応悪くなるだろ」
   司はリュックを一つ健斗に渡す。
健斗「は? ならねえし! お前もそういうこというのかよ」
美和「大丈夫、私のはボタン式だから」
司「(微笑み)そっか、じゃあよかった」
   はにかむ美和。
美和モノローグ「司君も素敵かも〜」
司「でも携帯は返してやれよ」
健斗「え、ちょっと待って。もう少し」
司「ダメだよ、人の情報端末は勝手に触っちゃだめなの」
健斗「えー、でもパカパカだから〜」
司「パカパカはいいからほら」
健斗「えーでも〜」
美和モノローグ「え、何これ、待って! 私(の携帯)を巡って、男子二人が言い争ってるんですけど! 凄い、なんだろこれ、妄想? 私の作った妄想?(自分の頬をつねる)痛い! 妄想じゃない! 現実、現実だわ。美和りんどうしよう、でも美和りんまだ10歳だから、こんな時どう立ち振る舞ったらいいのか分からない! 幼い自分が憎い! ああ、美和りんどうしよう、美和りんどうしよ〜」
直実の声「ああ!」
   司、健斗、両頬に手を当てた美和の3人、草むらにいる直実を振り向く。
直実「エイリアンキング出たんですけど」
司「うそだろ」
健斗「マジかよ」
   美和にみまもり携帯を投げ渡すと、直実の元に駆け寄る司と健斗。
美和「……ふふ、短い夢だったわ」
   携帯を手に、直実の元へ向かう美和。

◯草むら
   直実のスマホを、背後から健斗、司、美和の3人が覗き込んでいる。
健斗「うわ、キングでけー!」
直実「どうしよ、金の虫取り網使ったほうがいいかな」
司「いや、おかしいよ、だってキングはまだ」
美和「ねー、見えないー! 直ちゃんしゃがんでー!」

スマホ画面
   3Dキャラのエイリアンキングが、画面いっぱいにゆらゆらと動いている。道具から「金の虫取り網」を選択する直実。
直実の声「勿体無いけど使いどころだよね?」
健斗の声「そりゃそうだろ。だってキングだぜ」
美和の声「ねえ、それ使うとどうなるの?」
   エイリアンキングに向け、金の虫取り網が振り下ろされる。派手な演出。が、金の虫取り網はキングに突き破られる。
直実の声「げ、一発で破られたんだけど」
健斗の声「うわーすげー、さすがキング」
美和の声「なんか強そう」
直実の声「どうしよ、銀の虫取り網ならまだあるけど」
司の声「なあ」
直実の声「ワニの肉使ってみる? キング食べるかなあ」
司の声「なあ!」
直実の声「なによ」
司の声「おかしいよ」
直実の声「何がおかしいの」
   道具コマンドからワニの肉が選ばれ、エイリアンキングに向け投げられる。キングはそれを食べる。「キングには効果がない」のコメント表示。
直実の声「あー、ワニ肉損したー!」
健斗・美和の声「あー」
司の声「まだ実装されてないんだよ」
直実の声「は?」
司の声「俺、このゲームやりこんで、攻略サイト研究してるつもりだから分かるんだ。エイリアンキングはまだ、このゲームに実装されてない筈なんだよ」
直実の声「どゆこと? でも出てるじゃん」
司の声「だからおかしいんだって」
   エイリアンキングのコメントが流れる 「息子を返せ」
健斗の声「おい、なんか言ってるぞ」
美和の声「息子を返せ、だって」
直実の声「何それ、プリンスのこと? 返し方知らないし」
   キングのコメントが流れる。「私は取り返し方を知っている」
美和の声「キング知ってるって。何これ」
健斗の声「なら教えろよ!」
   キングのコメントが流れる。「いいだろう、なら教えてやる」
健斗の声「は、なんだこれ」
美和の声「会話してるみたくなってる」
   キングの背景が点滅する。
司の声「おい、特殊技くるぞ」
直実の声「え、何それ特殊技?」
   キングのコメント欄に『特殊技・次元転換』と流れる。直後、背景が歪む。

◯草むら
   スマホを手にしゃがんでいる美和。その背後からスマホを覗く美和・司・健斗。景色が激しく歪む。
健斗「なんだよこれ。なんか、ぐにゃぐにゃって」
美和「気持ち悪い」
司「おい、逃げる選べ! 早く!」
直実「逃げるって。(画面連打)ねえ、タッチ効かない! 逃げる選べない! 何これ、どうなってんの!」
   歪曲した空間。スマホ画面の中に次々吸い込まれ、消える直実・美和・司・健斗。スマホの中に4人が消えると、空間の歪曲が止む。宙に浮いていたスマホが草むらの上に落ちる。画面には、「Loading」の文字と、読み込み中のマーク。暫くすると画面が消え、再度立ち上がる。黒い背景に白地で「Hello!」と表示され、画面が切り替わる。ゲームタイトルが表示される。タイトルは「キャッチ・ザ・ヒューマン」。ポップなオープニングメロディが流れる。