必需品ブログ

やっていくからな

不意打ちでアレした

「他の生き物には絶対に無くて、人間にだけあるもの。それはね、ひめごと、というものよ。」(太宰治「斜陽」より)

不意打ちで友人をアレするという、そういうイベントに参加した。言い方を変えれば、サプライズというやつだ。サプライズでそいつの誕生を祝った。

付け加えると、もう一人誕生を祝われる存在がおり、彼もはるばる遠方から参加していた。ここからは便宜上、先に出した存在をジョバンニ、後者をカンパネルラとする。カンパネルラはジョバンニを祝うために駆けつけており、まさかカンパネルラ自身が祝われるとは考えていない。さらには参加者内に「僕は仕事で来れないということにしておいてくれ」という弱いサプライズを提供する者も現れ、三重の不意打ちのそれが仕込まれることとなった。

LINEに、ジョバンニとカンパネルラを除く参加者のグループが作られ、誕生プレゼントの選択からこの会は始まる。ジョバンニには早い段階でPS4をプレゼントすることが決まっており、カンパネルラに何をあげれば喜ぶのかという議論がスタート。歳の数の菊の花、耐荷重80kgのアニマルスツールなどが現実的な候補として挙がる。その中で、カンパネルラにはオリジナルのスマホケースという、ジョバンニへの贈り物からすると安価な割に手間はかかるアイテムが選ばれた。しかしカンパネルラの使っているスマホ端末を参加者が把握しておらず、隠密がカンパネルラに対して単独で突撃。「突然LINEしてすいません!」というキャプチャが貼られる。

一方その頃、旅行中のカンパネルラは悪い酒を呷り、とてもはしゃいだ後、帰りのバスの中で自責の念に押しつぶされる人間の表情を頻繁に見せるが、どこか「俺は悪くない」という鈍い光をちらつかせる。

やや時は経ち、特注のバースデーケーキのデザインが有識者たちにより考案。冴羽獠、馬、ぼのぼの、マインクラフトなど、ジョバンニとカンパネルラが好むキャラクタが描かれたアイデアで話が進むが、店舗側の「忙しくて無理」というアンサーにより瓦解。結果「写真ケーキなら融通が効く」という有識者の見解により、そういった方向で突き進んでいくこととなる。

当日、会場近くの駅で、早めに待ち合わせることになったアレする側。しかし空気が読めず、必要以上に早く駅に着くジョバンニ。配偶者から「遭遇注意」「そういうとこある」「トイレ前にいるので注意」などのアナウンスが流れ、「怖すぎる」「直接店舗に行った方が安全」など悲鳴で満ちる。この時点で一時、電鉄における貧乏神の存在に落ちるジョバンニだが、なんとか掻い潜り、会場にて座して待つアレする側。グループLINEに参加していないカンパネルラも、素知らぬ顔で座を据えている。その横顔に、かつて見せた自責の念と鈍い光は無い。

「来た」「来たっぽい」
テーブルが小声で満ちる。慣れがなく、こういう際にする表情が分からず前方の男を盗み見たところ、こういう時どんな顔をしたらいいのか分から無い男の顔をしており、俺は笑いをこらえるため舌を噛む。
少しして空気が沸き、「なんでえ、なんでえ」という表情をしたジョバンニの顔が目に入るのだった。

その後はカンパネルラの誕生会であることも明かされ、プレゼントの手渡し、そして有識者により作成されたオリジナルのケーキを食したりなどした。2人の顔写真と中央に救急車が描かれたそのケーキ。銀河鉄道ではなく救急救命病院が似合う2人の笑顔は眩しくて、まるで汚ない花火みたいだった。


「けれどもほんとうのさいわいは一体何だろう。」
「ぼくわからない。けれども、誰だって、ほんとうにいいことをしたら、いちばん幸なんだねえ。」
宮沢賢治銀河鉄道の夜」より)

これがいいことなのかどうかは別にし、近い人間の嬉しそうな顔を見るのは楽しい。真の幸福に至るのであれば、それまでの悲しみはエピソードに過ぎないのだ。